あとがき部屋
bounana1

 『棒人間と七色さん』をお読みいただき、本当にありがとうございました。
 この作品を執筆したのが2014年の夏頃になります。
 今回はあえて当時の文章をほぼ手直しすることなくアップロードする運びになりました。
 手直しをしてみると『前のほうが良かった』という結果になることが多いのです。諸々と事情はあるのですが、これが一番の理由になります。

 棒人間と七色さんは、なんだかんだと私の心に残る作品となりました。
 書き始めた当初は第一話だけ書いて終わりにしようと思って緩く書いていたのですが、二人の動かしやすさに魅了され、ずるずると18話まで書くことになりました。
 その過程でリアルタイムにお付き合い頂いた仲の良い方々からも好評を受け、とても嬉しかったのを覚えています。
 棒人間、七色さん、そしてシャケさんの三人は本当に愛されているなぁと胸が暖かくなりました。
 あらためて、本当にありがとうございました。

 今作品は、自分の無個性さから『棒人間』を名乗る女子高生が、自分とは正反対のきらきらした性格の幽霊少女『七色さん』に影響され、ちょっぴり人生に彩りが生まれるお話です。
 出会いについては触れていませんが、きっと最初から二人は緩い感じで出会ったのだと思います。
 友達ってきっとそういうものです。

 回が進むにつれて色々なことがありましたが、そのどれもがとりとめのない些細な日常でした。
 そんな毎日の煌きが、たしかに棒人間の心のなかには色鮮やかに残っていることでしょう。

 最終話手前で七色さんはいなくなってしまいますが、それもまた、棒人間にとっては良いきっかけとなりました。
 あまり仲が良いとはいえない両親や、自分を気遣ってくれる兄や姉との再会。そして、初恋の女の子との再会。
 皮肉にも七色さんと別れたことで、棒人間の記憶に残る人々と話す機会を手に入れたのです。
 兄と姉や、初恋の女の子とは、七色さんと別れてからいっしょに遊んでくれる心の拠り所になりました。

 一方で、七色さんとはけっきょく何者だったのか?
 それは本人の言う通り、地縛霊に違いありませんでした。
 ただし生霊です。
 ……いえ、生霊の定義をよく知らないので断言していいものか悩みますが、生霊のようなものです。生霊で地縛霊なんです。
 七色さんは、過去に危なっかしいひとと出会いました。
 親が帰ってくるまで留守番をしている間に、包丁を持った男が鍵のかかった部屋に忍び込んできたのですから、これはもう危ないひとです。
 男は強盗であり、目撃者である七色さんを包丁で刺して逃げていきます。
 七色さんはぎりぎり一命を取りとめたものの、意識が戻ることはありませんでした。いわゆる植物状態になってしまいます。
 しかし七色さんの意識は、幽霊となって自分が殺された部屋に留まることになりました。
 苦い思い出が残る部屋から両親は出て行き、七色さんは結果的に一人になってしまいました。
 記憶のほとんどもなぜか抜けていて、どうすればいいのか分かりません。
 そこへ現れたのが、しばらくして引っ越してきた棒人間だったのです。

 最終話手前で、七色さんは棒人間の前から忽然と姿を消します。
 それは、棒人間といっしょに居るうちに、生きる力を受け取っていたのが原因でした。
 生きる活力を得た七色さんは、だんだんと記憶を取り戻していきます。
 それと同時に、幽霊としての自分が消えかかっているのに気付くのです。
 きっと生き返るからだと七色さんは思いました。
 そして姿を消し、七色さんは自分の体で久しぶりに目を覚まします。
 しかし当初、七色さんは棒人間のことをすっかり忘れてしまっていました。
 だけれどなにかが引っかかるような、大事なことを忘れているような感覚に捕らわれてしまいます。
 誰か大事なひとが居たはずなのに思い出せない。もやもやした恐怖です。
 その恐怖を打ち払うようにして、忘れようと思えば思うほどに、記憶の片隅に残る棒人間の影が濃くなっていきます。
 悩まされながらも影と向き合う決断をし、三年掛かりでようやく棒人間のことを思い出したのです。

 以上が裏話となります。
 その後、けっきょく棒人間と七色さんは再会を果たすことができたのか?
 きっと再会できましたよね。
 二人とも会いたがっていて、二人とも互いのことが好きなんですから。

 ……全て語るのは無粋かと思いつつも、けっきょくつらつらと書いてしまいました。
 そろそろ後書きも締めさせていただきます。

 棒人間と七色さんはいかがでしたか?
 私はとても楽しかったので、読んでくださる方も同じ楽しみを感じていただけたなら、これ以上の幸福はありません。
 棒人間と七色さんと、彼女たちを取り巻く環境や人間関係に幸せがあることを、作者としての親心ながら切に願っております。

 謝辞になりますが、一番上の画像は猪垣さんに頂きました!
 毎度のことながら大変お世話になっています。七色さんが外で楽しそうにしているのが感慨深いですね。
 二人と一体の夏、とても楽しそうです。
 後書きのページに掲載することをお許しいただき、本当にありがとうございました!

 では、またどこかでお会いしましょう。
 文月れとろでした。


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