「出来た」
 最後の仕上げを終え、出来上がったそれをテーブルに置く。
「わぁ、棒さん器用」
「棒人間はチマチマしたことが嫌いじゃないのだ」
「好きでもないんだね」
 僕が作っていたのはクマのぬいぐるみ。
 暇つぶしに作ったものなので、そこまで凝った作りではない。
 だけど、ぬいぐるみはこのくらいが丁度いい。
「座らせやすくしたのが唯一のこだわり」
「うんうん、すごい」
「手乗りテディベア」
「ちっちゃくて可愛い!」
「肩乗りテディベア」
「棒さん器用」
「あ、落ちた」
 棒人間は撫で肩なのだ。
 滑り落ちて然るべき。
 床に落ちたぬいぐるみを拾い上げると、七色さんに突きつける。
 七色さんは首を傾げながら受け取ってくれた。
「あげる」
「え、いいの?」
「ん。元々そのつもりだった」
 ぬいぐるみの頭を指で撫でる七色さん。
 微笑ましい景色。
 作ってよかった、よかった。
「ありがと! でも一緒のお部屋に住んでるし、あんまり意味ない?」
「うん、そうかも。まあ、気分、気分」
「そっか、気分か。そだね」
 幸せそうな顔をしてくれる。
 作った甲斐があった。
「名前を付けてあげよう」
「あ、いいね!」
「七色さんが決めるといいよ」
「いいの? んーと……」
 しばらくぬいぐるみと向き合って悩んだ後、満足げに頷いた。
「シャケ!」
「うん。捕食対象だね」
「じゃあシャコ?」
「うん。エビだね」
「うー。いいや、シャケで決まり!」
「いいね」
 名前って、どれだけ考えてもしっくり来ないものだ。
 愛着が湧けばどんな名前でも可愛くなってくる。
 シャケ。うん、いいと思う。
「大事にするね!」
「うん。可愛がってあげて」
「はぁーい」
 シャケを抱き締める七色さん。
 小さいから抱き締めにくいかもしれない。
「大きいほうが良かったかな」
「ううん、そんなことないよ」
 なんなら大きいの作ろうかと思ったけど、だったら良いか。
「棒さん、マフラーとか編めるの?」
「それくらいなら。なんで?」
「ぬいぐるみ作れるんだったら、マフラーも出来るのかな、って思って」
「うん。セーターもいける」
「わぁ、棒さんすごい」
「棒人間は器用なのだ」
 マフラーか。
 寒くなってきたら、マフラーも作ってみよう。
 今は夏だから、まだまだ先の話だけど。
 寒いのも苦手だが、冬がちょっと待ち遠しくなった。



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