風邪を引いた。
 不覚。
「棒さん大丈夫?」
「あー」
 だるい。
 寒い。
 気持ち悪い。
「とりあえず学校に休みの電話……。電話取って」
「はぁーい」
 受話器を受け取り、数字を入力していく。
「どうも。あ、先生ですか。僕です。風邪をひいたので今日は休みます。はい。どうも」
 手短に伝えて通話を切ると、ぐったりとした。
「棒さん?」
「喋りすぎた」
「そうは思えないけどなぁ」
 棒人間は風邪に弱いのだ。
 参った、参った。
「病院は?」
「寝てれば治る」
「そうかなぁ」
「明日も治らなかったら行く」
「そっか」
「薬は飲まなきゃ……」
「棒さん無理しないでー。お薬どこ?」
「クローゼットの横の箱。あと水よろしく」
「はぁーい」
 僕が指差した方向にある箱をテーブルに置くと、台所へ向かう七色さん。
 こういう時、一人暮らしは大変そうだ。
 僕が風邪に弱すぎるだけかもしれないけど。
 棒人間は打たれ弱いのだ。
「お待ちどーさまー」
「ありがとう」
 箱を持ってきてもらい中身を探り、風邪薬を取り出す。
 粉末だから嫌いだ。
 それを口に入れると、すぐさま水で薬を飲み干した。
「……うげぇ」
「お薬は苦いよね」
「それもだけど、急に水を飲みすぎた……」
 ダブルコンボ。
 これは強烈。
 ……せっかく飲んだ薬、戻さないようにしないと。
「……寝る」
「うん、分かった。あ、シャケさんが一緒に寝てあげるって」
「ありがとうシャケさん」
 心強い。
 シャケさんを隣に置く。
「七色さんもおいで」
「えー。私は看病してるよ」
「ん」
 それはそれで良いかもしれない。
「何かあったら何でも言ってねー」
「七色さん頼もしい」
「セクハラ以外ね」
「残念」
 さて、どうしよう。
 さすがにすぐに眠るのは無理そうだ。
 棒人間は寝付きが悪いのだ。
「あ。ご飯どうしよう」
「冷蔵庫に何かないっけ?」
「んー」
 思い出そうにも、意識が朦朧として邪魔をする。
 お米はあったはず。
「ご飯炊いて、おかゆでいこう」
「はぁーい」
「ごめん。今日はご飯だけになる」
「大丈夫だよ」
「炊ける?」
「……き、気合で頑張る」
「うん、頼もしい。でも分からなかったら聞いて」
 その頃には、少しでも食欲が出てれば良い。
 ご飯、大事だ。
 いつもコンビニ弁当の僕が言うのもなんだけど。
 さすがに不摂生なのか。
 でも自分で作ろうにも、洗い物が面倒だし。
「あぁ、憂鬱だ」
「大丈夫?」
「うん、こっちの話」
「?」
 シャケさんを胸に抱えると、そのままゆっくり目を閉じた。
 すぐに寝付けないのがもどかしい。
「おやすみ」
 七色さんの声が耳に優しい。
 子守唄なんぞ歌ってくれれば、すぐにでも眠れそうだ。
 だけど、それはまた今度にしよう。
「……うん、おやすみ」
 途中で寝てしまうと、聴けなかった分がもったいないから。
 ……なんて、本末転倒なことを思うのだ。



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