部屋に帰ると、小包を七色さんに渡した。
「あげる」
 七色さんは何事かと目を瞬いた。
「開けてもいい?」
「うん」
 恐る恐る解いていく七色さんは、見ていてとても面白い。
 やがて出てきた小さな箱をぱかっと開けると、七色さんは「わぁ」と声を漏らした。
「これは?」
「んー。ヘアピン?」
 僕とてあまり詳しくないが、髪に付けるアクセサリー。
 ……のはず。
 虹色の星が飾り付けてあり、七色さんに似合うと思って衝動買い。
 九百円也。
 僕にしてはなかなかの買い物をしたほうだ。
「棒さんありがとね!」
「なんの」
 早速、耳の上付近に取り付ける七色さん。
「どう?」
「似合ってる」
「良かったぁ」
「うん。良かった」
 喜んでくれて、まずは安心。
 胸を撫で下ろして、いつも通りの場所に座る。
「でも、珍しいね?」
「ん」
「アクセサリーとかさ」
「そうだね」
 棒人間は無頓着なのだ。
 服なんぞ自分で買ったことがない。
 高いし。
「気まぐれ」
「そっか」
 髪飾りに手を触れ、ふんわり笑う七色さん。
「棒さんもオシャレしたらいいのにー」
「ご冗談を」
 棒人間はオシャレなどしないのだ。
 着れる服があれば良し。
 高いし。
「絶対美人さんになれるのに」
「棒人間はものぐさっぽい格好で十分なのだ」
「うん。まあ棒さんらしいや」
「七色さんはお洒落だったの?」
「うーん」
 思えば七色さんの生前について訊ねるのって、初めてかもしれない。
 棒人間は今が大事なのだ。
「えっとね。実は覚えてないんだ、生前のこと」
「そっか」
「どんな殺され方をしたかは、なんとなく覚えてるけどね」
「え、七色さんって殺されたの」
「うん」
 衝撃だ。
「びっくりしないね」
「棒人間に表情など要らぬのだ」
 顔には出ていないらしい。
 しかしそんなことを聞くと、やっぱり幽霊なんだなと思う。
 こんなに人間っぽいのに。
「でも、確かに殺されたんだけどさ。棒さんと会って、なんかおかしいんだ」
「恋?」
「違うと思う」
 残念。
「だんだん人間に戻っていくような、そんな気がする」
「?」
「えっとね。覚えてないかな、棒さんと会ったときは半透明だったじゃん」
「あ」
 そういえばそうだ。
 今やはっきり見えている。
「体温だって前はなかったしさ」
「そっか」
 いい傾向なのだろうか。
「このまま蘇るかも」
「そうなったらいいなぁ」
 僕もそう思う。
「七色さんは、蘇ったら何かしたいことある?」
「えっとねー」
 一瞬考えて、すぐ首を振る七色さん。
「やめたっ」
「なんで」
「恥ずかしい」
「気になる」
「ホントに生き返ったら教えるね」
「分かった」
 楽しみだ。
「棒さん棒さん」
「ん」
「ヘアピン、もう一つあったらお揃いにできるよね」
「シャケさんと?」
「棒さんと」
「え、いいよ。似合わないし」
 高いし。
 七色さんがじっと見つめてくる。
 …………。
「……機会があったら」
「うん!」
 髪飾りが大変気に入ったようで、しきりに触っては微笑む七色さん。
 七色さんはもし生き返ったら、僕から離れてどこかへ行ってしまうんだろうか。
 ……あんまり考えないことにしよう。
 棒人間は今が大事なのだ。



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