刀を握り、真っ直ぐに蛇火を見据える。
 頃合いを見て、蛇火に刀で襲いかかる。
 しかし私の攻撃は、いとも簡単に弾かれた。
 吹き抜ける風の音だけが耳に届く。
 手にじわりと残った痺れを優しく撫でて、そのまま風はどこかへ消えていった。
「じきに暗くなる。ここまでだ」
 蛇火の声が聞こえる。
 私は蛇火を相手に、強くなろうと勝負を挑んでいた。
 負けっぱなしなのが嫌だったのもある。
 しかしなにより、蛇火に勝てなければどのみち、私はどこかで討たれてしまうだろう。
 自分より強い相手に挑み、勝つことで、私はまた明日を生きられる。
 そう思って、二度と負けないなどと息巻いて挑んだものの、結果は私の惨敗に終わった。
 どう刀を振っても弾かれ、避けられ、そして蛇火に詰められる。
 どうしても勝てないのに、蛇火が加減しながら私の相手をしていることが嫌でも分かった。
 そこに腹が立つ。
「もう一回だ!」
「それは構わない。だがもう休んだほうがいい」
 蛇火は涼しい顔でそう言うと、刀を鞘に収め、小屋へ向かって歩いていった。
 きっと不意打ちで斬りかかっても、蛇火には通用しないのだろう。
 結局、蛇火に勝つことができなかった。
 蛇火に勝てるほど、強くなることができれば。
 茜色に染まっていた空はやがて、瑠璃色へと変わっていった。



  ―『泥田坊』―



 ずっと体を動かしていた疲れからか、夜はぐっすりと眠ることができた。
 朝日が障子を通って暖かく揺れている。
 軽く伸びをしながら、体を起こす。
 すこし体が痛むような気がした。
 昨日はあれだけ勝負をしたし、無理もない。
 そんなことを思っていると、戸の向こうから話し声が聞こえた。
 今日は誰かが来る日だと、蛇火が言っていたのを思い出す。
 私はそのひとに連れられて、あの森を抜けると言われていた。
 結局、私は蛇火を超えることができずにここを去ることになる。
 それは悔しいが、それも仕方ないと諦めた。



 戸を開ければ、見知らぬ男が一人。
 その男は見るからに妙な格好をしていたので、驚いた。
 男は目隠しをしていて、手には包帯を巻き、楽しそうな笑みを浮かべていた。
「銀次郎。さっき話した娘だ」
 銀次郎と呼ばれた男は座ったまま顔をこちらに向けた。
 しかし目隠し越しでは、とても私の姿が見えているとは思えなかった。
 目隠しに描かれた目玉の文様が、笑みとは裏腹に感情なくこちらを見据えているようで、気味が悪かった。
「おはようさん。話は聞いたぜ、蜘蛛の嬢ちゃん」
 そう言われ、咄嗟に警戒する。
 この男が私のことを知らないとは限らないのだ。
 いつ襲ってくるかも……。
 しかし男はけらけらと笑う。
「安心しなって。俺も蜘蛛の嬢ちゃんのことは知らないからさ」
 その言葉に、ひとまずは力を抜いた。
 簡単に信じるつもりはない。
 しかしとりあえず、今すぐ斬り合いになることはなさそうだった。
「俺は手目銀次郎。ま、好きに呼んでくれよ」
 楽しそうに歯を見せて笑う。
 やり取りを見ていた蛇火が、仏頂面でこちらを見た。
「知朱。外で待っていろ。銀次郎と話すことがある」
「なんだ、まだ何かあるのか?」
 蛇火はなにやら真剣な面持ちで銀次郎を見ている。
 邪魔するわけにはいかないだろうと思い、私は言われた通りに外へ出た。
「また後でなー、蜘蛛の嬢ちゃん」
 その声を背に受けてから、戸をぴしゃりと閉じた。
 銀次郎という風変わりなあの男。目が見えないのだろうか。
 だとしたら、銀次郎にはどんな世界が見えているのだろう。



 しばらく待つと、蛇火と銀次郎が小屋から出てくる。
「話は終わった」
「そうかい」
 蛇火はそれだけ言って、小屋のなかへ戻っていく。
 最後まで愛想がないというか、蛇火らしい。
「それじゃ行くとするか、蜘蛛の嬢ちゃん」
「ああ。……えっと、銀次郎」
「おう」
 名前を呼ぶと嬉しそうに銀次郎は笑った。
 人懐こいひとだ。
 銀次郎は率先して森のほうへ歩き始めた。
「ついてきな。出口は向こうにあるんだ」
 銀次郎の後ろについて歩く。長い目隠しの余りが髪の後ろで揺れていた。
 腰には刀を差し、笑っていながらも隙のない雰囲気があった。
 目隠しをしていても真っ直ぐに歩く銀次郎。
 蛇火の知り合いならば、銀次郎もきっと強いのだろう。
 漠然とそんなことを思った。
「……目、見えてないんだよな?」
 興味があったので聞いてみる。
「あー、まあね。そんなところ」
 銀次郎は目隠しを親指で掻く。
「こいつは生まれつきでね。なかなかどうして開かない。呪いみたいなもんだ」
「生まれつきなのか……。大変だな」
「見えないからって道に迷ったりはしないから、そこは安心してくれよ?」
「疑っちゃいねえよ。なんだか、私より歩くのが上手みたいだ」
「そりゃ蜘蛛の嬢ちゃんが不器用すぎるね」
 不器用。それは間違いないと私は思った。
「ま、八本も足がありゃ、そりゃ歩きにくいよなぁ」
 銀次郎は冗談を言って笑う。
 だけどそれでも、目が見えないよりは歩きやすいように思えた。



 青い香りが高まってくる。
 森は歩くたびに暗くなり、足元がよりおぼつかなくなる。
 それが続くと、いつの間にか私の足は、固いものを踏みしめていた。
 石造りの道になったらしい。
 しばらく銀次郎についていくと、奥のほうに鳥居が見えてきた。
「着いたぜ、蜘蛛の嬢ちゃん」
 そう言って銀次郎は鳥居に手を触れる。
 しかしその奥に道が続いているわけではない。ただ赤色の鳥居が建っているだけだ。
「なんだよ、ただの鳥居しかないぞ」
「ははっ、そう慌てなさんな。さあさあ、一緒に潜ろうぜ」
 銀次郎は私の手を握ると、鳥居のなかへ駆けこんだ。
 私も引かれて鳥居を潜る。
 すると……。気づけば私たちは森のなかではなく、石畳の広場に出ていた。
 眩い空の色に目が眩む。
「なんで……、さっきまで森だったのに」
「驚いてるな? ははっ。ま、無理もないかもな」
 銀次郎は私の反応を楽しそうに聞いていた。
 目が慣れてくると、先のほうへ走り出す。
 右に下り坂、左に上り坂。そして前の眼下には、遥か遠い景色が広がっていた。
 海と、森と、大地。そして海のほうに町が見える。
 ずっと遠くには山もある。そこから鳥が飛び立ち、空高く消えていった。
「ようこそ萌芽領へ。歓迎するぜ、蜘蛛の嬢ちゃん」
 銀次郎はおどけた調子でそう言った。
「萌芽領?」
 聞いたことのない場所だった。
 森の青い香りとは違う、染み渡る涼やかな天つ風。
 鳥居は石畳の広場に佇み、荘厳な雰囲気を振りまいている。
 色とりどりの蝶が舞い、なんともしとやかな色彩で描かれる情景。
 私のいる場所から見えるこの風景は、胸が高鳴るほどに絶景だった。
 ……いや、見惚れている場合ではない。
「銀次郎、助かった。ありがとよ」
「ん、行くのか?」
「ああ。助けてもらって、迷惑もかけらんねえしな」
 森を抜けられたなら、さっさと行こう。
 どこから追っ手がやってくるか分からないのだから。
「おーい、ちょいとそこの旅の方やい。そんなに慌てて、急ぐ旅なのかー?」
 背中に銀次郎からの声が掛かる。
「あてはないし、急ぐわけでもない。けど、とりあえず死ぬつもりがないのは確かだからな」
「ならさ」
 銀次郎が石畳を踏む音を鳴らしながら、こちらに近づいてくる。
「すこしばかり付き合っちゃくれないか?」
 そう言うので、私はうなずいた。
「まあ、借りくらいは返す」
「よーし、じゃあ行くか!」
 銀次郎が先に山をくだる道を進み始める。
 どこへ向かうつもりだろう。
 私はここから見える絶景を再び眺めると、銀次郎の背中を追いかけた。



 銀次郎についていくと、海のほうに見えた町に出た。
 その入り口である橋の上で立ち止まり、銀次郎を引き止める。
「待った。私、町には入らないからな」
「なんだ、血相変えて。付き合ってくれるんだよな?」
 確かにそうは言ったが、ここは人が多すぎる。
 私のことを知っている人に出くわすかもしれない。
 ましてや堂々と大通りを歩くなんて、私には危険すぎる。
 そう話すと、銀次郎は笑ってひらひらと手を振った。
「ははっ、大丈夫だって。誰も蜘蛛の嬢ちゃんのことは知らないからさ。賭けてもいいぜ?」
「だったら賭けは私の勝ちだ」
「なら試してみるくらい悪くないだろ? それに、もし知ってるやつがいたらさ」
 銀次郎は腰の刀をかちゃりと鳴らしてみせる。
 銀次郎の笑顔がやけに悪いもののように見えた。
「……そこまで言うなら分かったよ。あんたに委ねる」
「そうこなくっちゃ!」
 大手を振って歩き出す銀次郎。それに慎重になりながらついていく、
 活気に満ちた町は久しぶりだった。



 ここは魚の町。川と海に挟まれた町だそうだ。
 確かに高台から見下ろしたときも、水に囲まれた場所にあった。
 潮の香りもするし、魚を売っている店が多く見られる。
 背の低い瓦屋根の家に、木造の長屋。遠くには寺のようなものも見えた。
 なにより人の活気がある。
 警戒は忘れていないが、それでもこの空気に毒されて、私の緊張はだんだんとほぐれていった。
 ひとに声をかけられても、それは剣呑なものではない。
 本当に私のことを知る者がいないようだった。
「な? 言った通りだろ?」
 得意そうに笑う銀次郎。
 私は拍子抜けしながらうなずいた。
 敵がいないに越したことはない。しかしなんとなく腑に落ちない。
 どうして誰も私を知らないのだろう。



 銀次郎は知り合いに用があるといって、そのひとの家に訪ねていった。
 聞けば聡明な学者が住んでいるらしい。
 長話になるかもしれないから町を見て回って良いと言われた。
 言われたが、さて、どうしたものか。
「……私のことを誰も知らない、か」
 すこし試してみるのも良さそうだ。
 私は人通りの多い道を選んで歩いてみることにした。



 案の定というべきか、道に迷ってしまった。
 土地勘のない知らない町を歩き回れば、自然とこうもなる。
 町にはやはり私のことを知る者はいないようだった。
 それに感動していたらこの様だ。
「どうやって戻るかな……」
 項垂れて彷徨う。
 適当に歩き回っていて帰れるとはあまり思えない。
 かといって銀次郎のことを町のひとに聞いても、それで分かるとも思えない。
 私はとりあえず、覚えてる限りで来た道を戻ることにした。
「やれやれ」
 銀次郎の言う通り、私は歩くのが下手らしい。



 香ばしい匂いが漂ってきた。
 ここは店がたくさんある通りのようだ。
 飯屋でもあるのだろうか。
 香りの元を探ると『月屋』と書かれた暖簾を見つける。
 なかを覗けば人気のある飯屋らしく、かなり混雑している。
 腹が空いてきたが、あいにく金は持ち合わせがない。
 やむを得ない。それよりも銀次郎を探さなければ。
 後ろ髪を引かれる思いで歩き出すと同時、どこからか怒鳴り声が聞こえた。
「おいらに目をつけられたのが運の尽きっすよー!」
 続けて、おちょくるような子供の声。
 どこかで誰かが盗みを働いたらしい。
 声を聞きつけた野次馬に、それとなく私も混じってみる。
 屋根の上に大きな袋を持った少年が一人、青空を背にして立っていた。
 若く、背丈も低い少年だ。
 背には得物だろうか、鎖鎌を引っかけている。
 こげ茶色の服は使い込んだように薄汚れていて、ところどころ染みが見えた。
 髪はぼさぼさで、表情は余裕ぶった笑顔。
「誰が呼んだか泥松推参! 種もみは頂いていくっすよー!」
 声はいかにも少年らしく元気に響いた。
 自己主張の激しい泥棒だ。
「ほいじゃ邪魔したっすね! 闇に紛れて、とんずらっすー!」
 闇などどこにもないが、そう言って屋根の上を走り去っていく泥松と名乗る泥棒。
 私はひとつ思いついた。
 騒ぎがあれば人が集まる。
 そうなれば銀次郎と合流できるかもしれない。
 そう思い、私は泥松を追うことにした。
 捕まえるつもりがあるわけではないが、そうなれば金を頂けるかもしれない。
 そうしたら月屋で飯が食える。
 とくれば、追わない手はなかった。
 屋根の上によじ登り、泥松の後を追う。
 追いかける側になるのは新鮮だった。
「やっぱり来たっすねー! ふっふっふ、おまえのことは知ってるっすよ!」
 そう言われて、私は驚く。
 やはり私のことを知ってる者もいる。
 だとしたら目立ったのは失敗だったかもしれない。
 しかし今は、追いかけることに集中する。
 泥松の足も早いが、私も負けてはいない。



 そうして追いかけ続けて、魚の町の外れにある竹林までやってきた。
 すぐそこに広い川が見えるので、魚の町の端まで来たのだろう。
 笹に透けて青色に変わった光が、私たちを優しく包み込む。
「ぜー、ぜーっ。まさかここまで追いかけられるとは、さすがっすね」
 泥松の息が上がっている。
 いざ目前にすると、私よりも僅かに背が低いことが分かった。
「でも、でも、おいらのほうが、体力は、あるっすよ……!」
 確かに種もみが入ったあの袋は、担いで跳び回るには重すぎる。
 しかし私には関係ない。
「その袋を返して……その前に、おまえ、私のこと知ってるって言ったな?」
「言ったっすよ! 魚の町剣術道場師範の……て、おたく誰っすかー!?」
「人違いかよ!」
 焦って損した。
 泥松ははっとすると、汗を流しながら得意げに胸を反らす。
「い、いや、知ってるっすよ? 知ってるっすけど……うん、知ってるっすよ!?」
「落ち着けよこそ泥……」
「こそ泥じゃなくて泥松っす! 盗賊差別はよくないっすー!」
 なるほど、泥松は盗賊らしい。
 仲間もいるのだろうか。だとしたらすこし厄介かもしれない。
「今日はおいら一人っすけど」
 聞いてもいないのに白状されて、ますます調子が狂う。
「そういうそっちこそ、おいらのことを知っててここまで追ってきたっすね?」
 悪そうな笑みを浮かべる泥松。
 しかし外見も相まって、悪だくみをする子供にしか見えない。
「……」
 すこし考えてみる。
 しかし盗賊の知り合いはいない。
 泥松という名前にも聞き覚えはなかった。
「……いや、おまえ、誰だよ」
 やっぱり知らなかった。
「ええええっ、ひどいっすー! 自分がされて嫌なことはしちゃ駄目っすよー!」
 盗賊が言うと説得力もなにもあったものではないなと思った。
 あるいは泥松の人柄の成せる技かもしれない。
「とにかく、その袋は返してもらうぞ」
「返せと言われて返すほど、おいらは間抜けじゃないっすよ?」
「なら力ずくだ!」
「そう上手くいくっすかねぇ?」
 泥松は袋を無造作に置き、鎖鎌に持ち替える。
 戦う姿勢になったのを見て、私も刀に手を伸ばした。
「手前味噌、泥松。いざ太刀打ちっす!」
 鎖をまとめて持ち、鎌を手前に構える泥松。
 手に持った鎖を回し、おもりは弧を描く。
「いざぁっ!」
 元気よく声を出して泥松が動く。
 鎖を振り回し、重りをぶつけてくる。
 その直後に泥松の鎌が私に向けて振り下ろされた。
 私は刀でそれを受け止める。
 次いで、そのまま私は刀で泥松の胴を狙う。
 しかしこれは鎖に止められ、ぐるりと巻かれて刀の動きを封じられた。
 それを抜き取って距離を取る。
「やるっすねぇ」
「伊達に夜の蜘蛛として生きてはいないってこった」
「夜の蜘蛛、そう呼べばいいっすかね」
「またいつか会うことがあるならな」
 睨みあっていると、泥松は再び鎖を回し始める。
 その刹那、私の目の前に鎖の重りが迫った。
 思わず目を閉じると、額に重りがぶつかった衝撃がある。
 くらりとするが、倒れるほどではない。そのはずだった。
「泥松忍法!」
 その声を聞くと同時、なにかに足をとられて、重体の逸れた後ろに倒れた。
 そのまま地面に触れた手に冷たい感触が走る。
 着物に染み込む、柔らかい感触。
 手に握ってみて、ようやくその正体が分かった。
 泥だ。
 地面がぬかるみと化し、どろりと引っ付いてくる。
「そぉらっ!」
 泥松の声がして、倒れたまま刀を構える。
 鎌と刀の衝突。私の上で力を加えていく泥松。
 してやったりと含み笑いをしているようだ。
「くっそ……、こんのやろう!」
 握ったままの泥を泥松の顔に押し付けた。
 一瞬の隙が生まれ、そこを逃さずに立ち上がると、泥沼になった地面に泥松が倒れる。
 私はべたつく地面を乗り越えて、やっと普通の土を踏んだ。
 泥まみれになった後ろ髪を触ると、気持ち悪いものが背筋を走る。
 一方で、泥松はまだ自分で作った泥沼に苦戦していた。
 私のすぐ隣には種もみの袋が落ちている。
 やっとの思いで抜け出した泥松が気づき、苦い顔をした。
「ぐーっ、取り返されちまったっす! 沙羅木組の恥っす!」
「沙羅木組?」
 盗賊団の名前か何かだろうか。
「えぇい、かくなる上は!」
 泥松が手を振り上げた。
 なにが来るのかと身構えると、泥松はなにかを地面に叩きつける。
 そこからみるみるうちに煙が上がる。煙幕だ。
 紛れて攻撃してくるつもりだろうか。
「あそれ、とんずらっす、覚えてろっすー!」
「逃げるのかよ! 待て、泥松!」
「待つわけないっす! 煙が晴れるまで良い子にしてるがいいっすー!」
 視界が白に染まり、なにも見えない。
「いたっ! 誰っすか泥まみれにしたの! はっ、おいらだったっす!?」
 そんな叫びをたまに上げる。
 煙が晴れると、そこには誰もいなかった。
 逃げられてしまったらしい。
「……取り返すもん取り返せたし、よしとするか」
 種もみの袋を抱え、町に戻る。
 そういえば、結局銀次郎とは会えなかった。
 また探し直しだ。
 途方に暮れる思いで歩き出した。



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