普段から静かな蛇火と暮らすのは、そういう意味で苦ではない。
 だが言葉を交わそうとすれば、例の飄々とした態度に苛立ってしまう。
 蛇火のそういうところが気に食わなかった。
 今朝も蛇火に勝負を挑んで、やはり負けてしまった。
 なので私は更に腹が立つ。
 蛇火にもそうだし、自分はこれほど弱かったのだと、自分に腹が立つのだ。



  ―『手の目』―



 祭凰館の大仰な門構えが見えると、ちょうど祭凰館から出てくる銀次郎の姿が見えた。
 昨日と同じく、楽しそうな表情をしている。
 銀次郎も私に気づいたらしく、こちらへ駆け寄ってきた。
「よう蜘蛛の嬢ちゃん。いい朝だな」
「ちょっと冷えるけどな」
 昨夜に雨でも降ったのだろうか。狭間の檻の外は濡れた山道や、葉についた雫が目立つ。
 だがじめじめとした空気ではなく、あくまで清々しい涼しさだった。
「ははっ、だな。滑って転ばねえように気をつけろよー」
「銀次郎もな。……どこか出かけるのか?」
「あーちょっとな」
 銀次郎は苦笑する。
「昨日の種もみ泥棒がまた出たそうだ」
「……泥松」
「まだ魚の町の近くにいるってんだから、ちょちょいと片付けてくるさ。礼に昼餉の一回や二回は食わせてもらえるだろうしな」
 銀次郎はそう言って「じゃあな蜘蛛の嬢ちゃん」と手を振って山を下ろうとする。
 私はその後を追いかけた。
 銀次郎は妙に思ったのか首を傾げる。
「あれ? 蜘蛛の嬢ちゃん、祭凰館に用があるんじゃないのか?」
「どうせ祭凰館にはいつでもいけるしな、とりあえず私がここにいるうちは。それに、いいこと聞いたからな」
「ん? いいこと?」
「手伝ったら飯が食えるんだろ?」
「ははっ、なるほどね」
 銀次郎は愉快そうに笑った。
 銀次郎の横について、二人で山道を下っていく。
「じゃ、件の盗人をとっちめたら、月屋にでも食いに行くか」
 銀次郎の軽口に答えながら、ひんやりとした朝霧の空気を楽しむ。
 空を仰ぐと、空はどんよりと灰色に染まっていた。
 しかしこの分ならじきに晴れ間が差すだろう。
 自然を楽しむ余裕が出てきた自分にすこし驚いていた。



 湿った土の香りがする。ところどころが水たまりになっていた。
 しかし銀次郎は目が見えていないはずなのに、それを避けながら悠々と先を歩く。
 そうしていると、やがて魚の町へ続く大橋に辿り着いた。
「で、どうするんだ?」
 水かさが増した川水が、音を立てて海へ流れていくのを眺めながら、銀次郎に聞いた。
「そうだなー。町のなかは誰かしらが探し回ってるだろうし、町の周りを探ってみるか」
「分かった」
 橋は渡らずに、魚の町の外周を歩く。
 魚の町は、川と海に挟まれた、小さな島の上の町だ。
 雨が降って水かさが上がっている今、川の上を渡って逃げるのは難しいはず。
 それでもまだ捕まっていないということは、やはりもう町を抜け出した後なのだろうか。



 私と銀次郎は背の高い雑草ばかりがあるところを探ることにした。
 銀次郎の背よりも遥かに高い草のせいで、目の前ひとつ見渡せない。
 その雑草を刈り取って作られた道は、すっかり泥濘と化していた。
 べたべたとした地面を踏みしめながら、泥松のことを思い出す。
 負けはしなかったが、勝ちもしなかった。
 私もまだまだ弱い。これまで生き残ってこられたのが不思議なほどに。
 それはやはり私にとって、とても悔しいことだった。
「なーに考えてんだ、蜘蛛の嬢ちゃん?」
 足場の悪さにまるで苦労する素振りのない銀次郎が、私のほうに顔を向けた。
「最近、誰にも勝ててないって思った。もっと強くなりたいって思ったんだよ」
「ははっ、なぁに、誰にだってそんなときはある」
「銀次郎にも?」
「さあね。俺は自分の力に、大して興味がないもんでね」
 こだわりなさげに言う銀次郎。
 その余裕を見るに、銀次郎も私に敵う相手ではないのだろう。
 私の視線に気づいたのか、銀次郎は刀を鳴らして見せた。
「一戦、交えてみるかい?」
「いや、いいって。また負けたらへこむから」
「そっかい? 俺はどうなるか興味があるが、無理にとは言わないさ」
 へらへら笑いながら銀次郎は刀から手を離した。



 しばらく歩くと沼地に出た。
 綺麗に澄んだ沼で、深い底が透けて見えていた。
 周りには相変わらず長い雑草が蔓延っている。
「ここにもいなかったな。じゃあ次はー、っと」
 銀次郎が次の指針を決める間に、私は沼の周りを歩いてみることにした。
「もう捕まってるんじゃないのか?」
 私は歩きながらそう声を投げた。
 銀次郎は「んー」と唸る。
「泥をどうこうって万術なら、こういうところが好きかと思ったんだけどな」
「万術って、前にも聞いたな。それって何なんだ?」
 銀次郎に聞いてみる。
「あー、まだ知らないんだっけ。例えば泥松の地面を泥にする力。それも万術だ」
 銀次郎はどこから話そうか迷いながら語る。
「まあ、この辺に住んでるやつはみんな持ってる。変な能力、みょうちくりんな体質、その他諸々な」
「なんて場所だ……」
 だから私は勝てないのだろうか。
 うんうんと悩んでいると、銀次郎が笑い声を上げる。
 そのとき、向こうに見える地面の泥濘が溶けたように見えた。
 どろりと地面が沈む。
 なんだろうと思いじっと見ていると、その地面から小さな手が飛び出した。
 泥に塗れた手で誰かが這い上がってくる。
「ぷはあっ! やっと這い上がったっす! もー嫌っす、口に泥が入ったっすー! 疲れるし汚れるし、こんな手は二度と使わんっすからねー!」
 顔を出してそう言ったのは、やはり泥松のようだった。
 大きな袋を持って、ようやく這い上がってくる。
「おいらに掛かればこんな地面、ほほいのほいっす! ……疲れたし、汚れたっすけど」
「地面の下を通ってきたのか? 魚の町から? おまえ、根性はあるんだな」
「ぎゃあっ!? 何奴っすか!?」
 ようやくこちらに気づいた泥松が振り返る。
 銀次郎はといえば、実に面白そうに私たちのほうを向いていた。
「あーっ! そこの娘は、えーっと、知ってるっす、知ってるっすよ! 蜘蛛っす!」
「私もおまえを知ってる。泥だな」
「誰が泥っすか!」
「誰が蜘蛛だ!」
 そこで泥松はもうひとりの気配にも気づき、銀次郎のほうについと顔を逸らした。
「うわわっ、大物っす! そっちも知ってるっすよ!」
「おっ?」
 銀次郎は泥松に期待するように身を乗り出した。
「祭凰館がお館様、胡氷の付き人! 人斬りヤンマっすね!?」
「あー。そう名乗ってたこともあったっけな。懐かしい名前を出してくれるぜ」
「えれぇのに会っちまったっすー! もうくたくたっすよ、おいら!」
 人斬りとは、物騒な肩書だ。
 しかし私も人のことは言えないかと思い直す。
「今は手目銀次郎だ。よろしくさん」
「手目銀次郎! そうっすそうっす、それっすよ! そしてここはどこっすかぁー!」
 頭を抱える泥松。
 相変わらず騒がしい少年だ。
 銀次郎はやはり笑っている。
「はははっ。活きの良いやつだな、泥の坊主」
「泥の坊主ってなんすか! 略してドロボウみたいな言い草っす、無礼千万っすー!」
 そう喚きながら泥松は、片手に煙玉を忍ばせる。
「待て、泥松!」
「待ってられないっす! こんな大物、おいらの手にゃ余る! いざ退散っすー!」
 止めようと動くが、しかし泥松のほうが早い。
 煙玉を地面に叩きつけると、私の視界が白に包まれた。
「くそっ、間に合わなかったか」
 私が悪態をつく。
 その刹那。なにかが空を切り裂く音と共に、鳥が横切るような、そんな気配を感じた。
 次いで、どさりとなにかが落ちる音。そして銀次郎のほうから、刀を鞘に収めるような音。
 なにが起きているのやら、私には分からない。
「おーい、泥の坊主! なにか忘れ物をしちゃいないか?」
 銀次郎が言うと同時に、白煙が晴れてくる。
 泥松が派手に転んでいて、その近くに泥松が持っていた袋が落ちている。
 袋口が切られていて、なかから種が零れてしまっていた。
「ふ、不覚っす、なんで、なんで、袋が軽く……袋がないっすーっ!?」
「はははははっ!」
 泥松の叫びを聞きつけて銀次郎が愉快そうに笑った。
「なにかやったのか、銀次郎?」
「おう、まあな」
 泥松が悔しそうに立ち上がる。
「ぐぐ……。人斬りヤンマ、いや、手目銀次郎……。噂に違わぬ使い手っすね」
 泥松はくじけず鎖鎌を手にし、銀次郎に構えた。
「それが手目銀次郎が使う技術、ヤンマ斬りってやつっすか!」
 銀次郎はわざとらしく刀を鳴らしながら、歯を見せてにやりと笑う。
「よく勉強してるな、泥の坊主」
「ううー、怖いっす。でももう失敗はなしっす! 失敗すると怒られるっすからね! おいらにも意地と矜持と面子があるっす!」
 泥松は片手で鎖を回し、冷や汗をかきながら銀次郎と対峙した。
「手前味噌泥松、またも太刀打ちぃっ!」
 鎖鎌をぎちぎちと鳴らす泥松を相手に、銀次郎は余裕の笑みで私の頭に手を乗せた。
「見てな。俺が強いかどうかは蜘蛛の嬢ちゃんが決めることだ」
 そう言って銀次郎は、ついにその刀を抜いた。
 真正面に突き出すように構える。僅かに顔を出した日輪に照らされ、刀身がきらりと光る。
 その後は、一瞬だった。
 銀次郎は一瞬で泥松に詰め寄り、泥松の間合いを抜けた。
 間合いがなくなり、泥松は引くに引けない。引けば突きが繰り出されるのを恐れている。
「うぐぐ、動けねっす……」
「な? なにもできないよな、この距離だとさ」
「ええいこんにゃろう! 泥松忍法ぉっ!」
 掛け声ひとつ、泥松と銀次郎の立っていた地面がどろりと溶け、泥濘と化す。
「おっと」
 銀次郎は咄嗟に下がり、泥松も遅れて距離を取った。
「ははっ。やっぱいいな、真剣勝負」
「こちとらいっぱいいっぱいっすよーもー!」
 やけになって叫ぶ泥松。銀次郎は相変わらず余裕そうだ。
「さて、じゃあ本気はこっからだ」
 銀次郎はそう言うと、右手の包帯を解いていく。
 包帯の隙間に見える手のひらに、思いがけず驚いた。
 手のひらに目玉がついていた。
 眩しそうに細められたそれは、人間の目玉そのものだ。
 しかし泥松は最初から知っていたらしく、そこまでの動揺は見られない。
「それが手目を名乗る所以ってやつっすね」
「そうともさ。ははっ、さすがに眩しいな」
 銀次郎は笑い、刀を正面に突き出したまま引き、目玉が露出した右手を代わりに前に出した。
 不気味に蠢く瞳が泥松を捉える。
 その視線と刀の切っ先、その双方が突き刺すように鋭い。
「想像以上の重圧っす……」
「そうかい? ありがとよ」
「逃げるべきっすよねえ……」
「へえ? 取り返さなくていいのか、これ。怒られるんだろ?」
 銀次郎は傍らに落ちた袋を顔で指した。
 泥松は悔しそうに唸る。
「あああもうっ! いいっすよ、そこまで言うなら儘っすー! 覚悟ぉ!」
 泥松の投げた鎖が銀次郎の手の目を狙う。
 銀次郎はそれをいとも簡単に避け、鎖をわざと腕に絡ませ、ぐいと引っ張った。
 泥松がよろめきながら銀次郎に引き寄せられていく。
 やがて気づくと、またも互いの間合いの内。
「さあ、またこの距離だぜ。どうするよ、泥の坊主?」
 銀次郎の挑発に泥松の歯がぎりと鳴った。
 泥松が一歩下がって鎌を振りかぶる。銀次郎も同じく刀で突きの構えを取った。
 それから幾度か打ち合い、二人の体は交差して互いに下がり、背中合わせになる。
 泥松は真剣だが、銀次郎はまるで遊んでいるようだった。
 背中合わせになると泥松は動けない。銀次郎も動くつもりはないようで、泥松の様子を窺っていた。
「……おっと、のんびりしすぎたかね」
 ふと気づくと、銀次郎の足元が泥濘となり、泥に足を取られていた。
「動けないっすよ! おいらの泥で捕まえたっす!」
 泥松はようやく動けるようになり距離を取る。
 しかし銀次郎はやはり余裕そうな笑みを浮かべていた。
「いい目だ、泥の坊主。でもさ、ひとつお忘れのようだぜ」
 銀次郎の刀がゆらりと揺れる。
 正面に突き出した刃を、そっと後ろへ引き、まっすぐに突き出した。
 そして刀を納めると同時、刹那の風。
 糸のように細く、鳥のように早い。そういう風が場に吹いているようだった。
 その見えない風は周辺の雑草を斬りながら飛ぶ。
 地面に触れれば泥に切れ目が走る。
 まるで蜻蛉のように飛ぶ軌道、無作為な斬撃。
 それが泥松の持つ鎖鎌に迫る。
「うわわ!?」
 そこで、しかし斬撃はぴたりと止んだ。
「生ける斬撃。それが俺のヤンマ斬りさ」
 銀次郎は泥から抜け出し、泥松のほうを向く。
「斬りたいもんだけ斬り、斬りたくないもんは斬らない。それがヤンマ斬りの真骨頂ってね」
「お、お、恐れ入ったっす……」
 泥松は腰が抜けたようで、へろへろと地面に座り込んだ。
「さて、どうするよ。続けるのも楽しいが、泥の坊主が限界らしい」
「……やむなしっす。でも! ヤンマ斬り、確かにこの目で見たっすからね!」
「沙羅木組に知らせるか?」
「なんでその名を知ってるんすか!」
「おまえが相手をした蜘蛛の嬢ちゃんに教えてもらったのさ」
「口を滑らせちまってたっすー!」
 傍から傍観していた私は、二人に近寄った。
 そして後ろの泥松を親指で指しながら銀次郎に聞く。
「で、こいつはどうするんだ?」
「んー、俺らは役人でもねえしなぁ。見逃すさ。種もみが帰ってきたんだ、文句はないだろうぜ」
「……いいのかよ?」
「まあな。ところで泥の坊主、ひとつ教えてほしいことがあるんだけどさ」
 銀次郎は泥松の前に屈み、目線を合わせる。
 泥松はすっかり意気消沈したようで目が泳いでいた。
「……な、なんすか?」
「沙羅木組といえば、天ツ峰を縄張りにする盗賊だろ。なぜこの萌芽領に来たんだ?」
「く、詳しいっすね……」
 泥松は言い渋っていたが、やがて口を開く。
「沙羅木さんの意向っす。……それだけ教えてやるっす」
「ふうん、なるほどね」
 銀次郎はその答えだけで満足したのか、もっともらしく頷いて立ち上がる。
「ほいじゃ、この種もみは返してもらうぜ。泥の坊主は見逃すから、帰った、帰った」
「ぬうう、情けを掛けられるなんて、この泥松、情けないっす……」
 泥松はよろよろと立ち上がると、袋を見下ろしてため息を吐いた。
 銀次郎は解いた包帯を器用に結ぶと私に差し出して「ちょっと結んでくれ」と言った。
「さて、俺からの用はなくなったが、蜘蛛の嬢ちゃんは個人的な恨みでもあるのかい?」
 きっちり包帯を結んでやり、泥松のほうを見る。
 泥松はぎくりと体を震わせた。
 おずおずとこちらを見るので、とりあえず睨み返しておく。
「ひいっ、なんすか! やるんすか!? すっかり打ちのめされたおいらに追い打ちをかけるつもりっすかぁ!?」
「悪党が同情で助かろうとしてんじゃねえよ……」
 ふうと息を吐く。
「あのとき逃げられたのは癪だ。勝てず負けずのままじゃ締まらねえ」
「うぐぐぐ、いいっすよ! もう来るなら来るっす!」
「待てよ、せっかちだな。銀次郎が逃がすって言ってんだから、逃げていいって」
「あえ?」
 拍子抜けしたような声を漏らす泥松。
 ただし、と私は前置きをして話す。
「次のときは私と勝負しろ。私は負けっぱなしじゃいられねえんだ。これからを生き抜く自信や、私の矜持のためにもな」
「……なにを言ってるのかよく分からねっすけど、いずれ決着をつけるってことっすね?」
「おまえ如きに負けっぱなしってのは嫌だからな」
 銀次郎と泥松の戦いを見て、つくづく思った。
 こんな相手と互角だったのかと。
「ばっ、馬鹿にすんなっす! いいっすよ、今度はおいらが勝ってやるっすから!」
 泥松は胸を張って威張った。
 私からの言葉が途切れたのを見て、銀次郎が笑う。
「もういいのか? じゃあいってよし!」
「ではでは失礼して」
 泥松は懐から煙玉を取り出した。
 必要あるだろうか。
「あそれっ、とんずらっすー! 次に会ったら覚えてろっすー!」
 ぼふんと音を立てて、また白い煙が立ち上る。
 近くを走り回る足音がよく聞こえた。
「うあっ、草がくすぐったいっす! いまのうちに逃げなきゃかっこわりいっすー!」
「……もうかっこわりいから安心して逃げろよ」
 喚きながらも、しかし煙が晴れる頃には泥松の姿はなかった。



 重たい袋を持って歩くのは、足場の悪さも相まって、かなり堪えた。
 滑らないように注意しながら私は銀次郎に声をかける。
「銀次郎、あんた、その目……」
「この手か?」
「……それも万術か?」
 包帯は巻いたままだが、手を翳されてすこし身構える。
 正直なところ、すこし怖かった。
「そう。変化の類の万術さ」
「ちゃんと見えてるのか?」
「この手の目はね。ただこの手の万術は怖がられるから、普段は隠してる」
 おかげで目に頼らなくても歩けるようになった、と銀次郎は笑う。
 万術。私を知らないことと言い、蛇火に出会ってから妙なことだらけだ。
 交代だと私は銀次郎に袋を押し付けて、大きく伸びをする。
「なー蜘蛛の嬢ちゃん、腹が減らないか?」
「そうだな。飯が食いたい」
「よーし。なら予定通り、月屋で飯を食って帰るとするか!」
 妙なことだらけとはいえ、明日の飯にありつきやすい土地なのはありがたいと思った。
 その上、美味しいのだからこの上はない。
 すっかり晴れ渡った空の下、乾いて歩きやすくなった地面を、軽くなった足取りで進んでいった。



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